身体拘束廃止に関する指針
Information disclosure
社会福祉法人函館共愛会が経営する老人福祉施設、愛泉寮・みなみかやべ荘・知内しおさい園・まろにえは、施設入居者及び施設利用者(以下「入居者等」という)への身体拘束廃止を図るための指針を次のとおり定めます。
◎ 施設における身体拘束廃止における基本的な考え方
1 私達は、身体拘束廃止に向けて最大限の努力を行います。
2 私達は、身体拘束ゼロ及びサービスの質の向上を目指して実績を蓄積していきます。
3 私達は、自信を持って提供できるサービスを目指し、組織をあげて身体拘束廃止に取り組んでいきます。
(1)身体拘束は廃止すべき。
(2)廃止に向けて常に努力します。
(3)安易に「やむを得ない」で身体拘束を行わないこと。
(4)身体拘束を許容する考えはやめるべき。
(5)創意工夫を忘れないこと。
(6)入居者等の人権を一番に考慮すること。
(7)福祉サービスの提供に誇りと自信を持つこと。
(8)身体拘束廃止に向けてありとあらゆる手段を講じること。
(9)やむを得ない場合、入居者等やご家族に対する十分な説明を持って身体拘束を行うこと。
(10)身体拘束を行った場合、常に廃止をする努力を怠らないこと。(常に「ゼロ」を目指すこと。)
◎ 身体拘束廃止に関する委員会及びその他施設内の組織に関する事項
1 身体拘束廃止を目的として「身体拘束廃止委員会」を設置します。なお、虐待防止委員会と兼ねる事を認めます。
2 構成メンバーは以下の5名以上のメンバーで構成します。
施設長、介護職員、看護職員、介護支援専門員、生活相談員、その他関係職員。ただし各職種の責任者もしくはそれに準ずる者が望ましい。
3 身体拘束廃止委員会は3か月毎に1回以上開催し、次の事項を検討します。
(1)身体拘束に関する規定及びマニュアル等の見直しや発生した身体拘束の状況、手続き、方法について検討し、適正に行われているかを確認します。
(2)身体拘束の兆候がある場合は、慎重に調査・検討及び対策を講じます。
(3)教育研修の企画を立案し、職員研修を実施します。
(4)日常ケアを見直し、入居者等に対して人として尊厳のあるケアが行われているかを検討します。
◎ 身体拘束廃止の為の職員研修に関する基本方針
1 職員採用時には、事故発生防止、虐待防止を併せて身体拘束廃止に関する研修を随時実施します。
2 年間計画に基づき、年2回の身体拘束廃止に関する教育を行います。
◎ 身体拘束となる具体的行為と身体拘束廃止に向けてなすべきこと
1 介護保険施設の指定基準の身体拘束禁止規定
「サービスの提供にあたっては当該入居者(利用者)又は他の入居者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入居者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」
2 介護保険指定基準において禁止対象となる具体的な行為
(1)徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
(2)転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
(3)自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
(4)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
(5)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
(6)車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
(7)立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
(8)脱衣やオムツはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
(9)他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
(10)行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
(11)自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
3 身体拘束を行わずにケアを行うために(3つの原則)
(1)身体拘束を誘発する原因を探り改善します。
(2)身体拘束廃止をきっかけに「より良いケア」の実現を目指します。「言葉による拘束」にも配慮する必要があります。
(3)5つの基本的ケアを徹底します。
以下の5つの基本的ケアを実行することにより、点滴をしなければならない状況や転倒しやすい状況を作らないようにすることが重要です。
①起きる
人は座っている時、重力が上からかかることにより覚醒します。目が開き、耳が聞こえ、自分の周囲で起こっていることが分かるようになります。これは、仰臥して天井を見ていたのではわかりません。起きるのを助けることは人間らしさを追求する第一歩です。
②食べる
人にとって食べることは楽しみや生きがいであり、脱水予防、感染予防にもなり、点滴や経管栄養が不要になります。食べることはケアの基本です。
③排泄する
なるべくトイレで排泄することを基本に、オムツを使用している人については随時交換が重要です。オムツに排泄物が付いたままになっていれば気持ち悪く、「オムツいじり」などの行為につながることになります。
④清潔にする
きちんと風呂に入ることが基本です。皮膚が不潔であればかゆみの原因になり、そのために大声を出したり、夜眠れずに不穏になったりします。皮膚をきれいにしておけば、本人も快適になり、また、周囲も世話をしやすくなり人間関係も良好になります。
⑤活動する(アクティビティ)
その人の状態や生活歴に合った刺激を提供することが重要です。具体的には音楽、園芸、体操、家事、テレビなどが考えられます。言葉による刺激もありますし、言葉以外の刺激もありますが、いずれにせよ、その人らしさを追求するうえで心地よい刺激が必要です。
◎ 身体拘束発生時の対応に関する基本方針
身体拘束は行わないことが原則ですが、緊急時やむを得ない場合については以下の運用によるものとします。
介護保険指定基準上「当該入居者(利用者)又は他の入居者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」には身体拘束が認められていますが、これは「切迫性」「非代替性」「一次性」の3つの要件を満たし、かつ、それらの要件等の手続きが極めて慎重に実施されるケースに限られます。「緊急やむを得ない場合」の対応とは、これまで述べたケアの工夫のみでは十分に対応できないような、一時的に発生する突発事故のみに限定されます。当然のことながら安易に「緊急やむを得ない」ものとして身体拘束を行なうことのないよう、次の要件・手続きに沿って慎重な判断を行うことが求められます。
1 3つの要件をすべて満たすことが重要
以下の3つの要件をすべて満たす状態であることを「身体拘束廃止委員会」で検討・確認し記録しておくこと。
(1)切迫性
本人又は他の入居者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高い「切迫性」の判断を行う場合には、身体拘束を行うことにより本人の日常生活に与える影響を勘案し、それでもなお身体拘束を行うことが必要となる程度まで本人又は他の入居者などの生命又は身体が危険にさらされる可能性が高いことを確認する必要があります。
(2)非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がない「非代替性」の判断を行う場合には、いかなる場合でも、まずは身体拘束を行わずに介護するすべての方法の可能性を検討し、本人又は他の入居者などの生命又は身体を保護するという観点から他に代替手法が存在しないことを複数の職員で確認する必要があります。また、拘束の方法自体も本人の状態像などに応じて最も制限の少ない方法により行わなければなりません。
(3)一時性
身体拘束その他の行動制限が一時的なものである「一時性」の判断を行う場合には、本人の状態像等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要があります。
2 手続きの面でも慎重な取り扱いが求められる
仮に3つの要件を満たす場合にも以下の点には注意すること。
(1)「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかの判断は、介護職員・看護職員・介護支援専門員・生活相談員の各責任者もしくはそれに準ずる者が望ましく、施設長の合意のもと行う。身体拘束廃止委員会において課題として取り上げ協議する。基本的に個人で判断しないこと。
(2)本人や家族に対して身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、時間帯、期間等を出来る限り詳細に説明し、十分な理解を得るように努める。説明は介護及び看護職員の責任者もしくはそれに準ずる者又は生活相談員もしくは介護支援専門員で行う。仮に、事前に身体拘束について施設としての考え方を本人や家族に説明し理解を得ている場合であっても、実際に身体拘束を行う時点で必ず個別に説明を行うこと。
3 身体拘束に関する記録が義務付けられている
(1)緊急やむを得ず身体拘束を行う場合には、その態様及び時間、その際の入居者等の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければならない。
(2)具体的な記録は「身体拘束に関する説明書・緊急やむを得ない身体拘束に関する経過観察・再検討記録簿」を使用する。記録には日々の心身状態等の観察、拘束の必要性や方法に係わる再検討を行う毎にその記録を加えると共に、それについての状況を開示し、職員間、施設全体、家族など関係者の間で直近の情報を共有する。また、この記録は行政の監査においても提示できるようにすること。
◎ 入居者などに対する当該指針の閲覧について
施設内に掲示するとともに、ホームページにも掲載し、入居者(利用者)及びご家族が、いつでも閲覧できるようにします。
◎ その他身体拘束廃止の推進のために必要な事項
当該指針に関する必要な事項の改正等については、「身体拘束・虐待マニュアル編成委員会」において適宣協議し、理事長の承認を得ます。
附 則
本指針は、令和6年7月1日から施行します。